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農業IT化の市場予測
農業IT化の市場規模は、
● 2020年に732億円強と予測
→ 2015年比約4.5倍の成長(2015年の市場規模は165億円と推定)
● なかでも農業クラウドサービスが大きく進展
→ 2015年比約7.5倍の伸びとなり、農業IT化市場の48%を占める
市場調査・コンサルティング会社の株式会社シード・プランニング(本社:東京都文京区 梅田佳夫社長、以下シード・プランニング)は、農業IT化の現状と将来展望に関する調査を実施し、このほど、その結果をまとめました。
我が国の農業課題は、基幹的農業従事者の減少とその高齢化が挙げられます。平成7年から平成27年までの間に、基幹的農業従事者は256万人から168万人に減少、平均年齢は59.6歳から66.7歳に上昇しています。
こうした状況に対して、世界最先端IT国家創造宣言においても、農業の現場における計測などで得られる多くのデータを蓄積・解析することで栽培条件を最適に制御する方式の構築や、高い生産技術を持つ篤農家の知恵をデータ化して小規模農家も含む多数の経営体で共有・活用することなどを通して、生産性の向上・収益向上・人材育成等に取り組むとしています。
また、農場から食卓までをデータでつなぐトレーサビリティ・システムを整備して、安心・安全なジャパンブランドの確立を図ることとしています。
このような背景のもと、本調査では、農業のIT化に取り組む企業の製品概要や先進的な活用事例を取材し、今後の農業IT 化の市場性と将来性を明らかにしました。
なお、本調査結果の詳細は、調査研究レポート 「農業IT化・スマート農業の現状と将来展望 農業IT化レポート:2016年版」 として販売中です。
http://store.seedplanning.co.jp/item/9172.html
調査結果のポイントは以下の通りです。
調査結果のポイント
● 2020年に732億円強と予測
→ 2015年比約4.5倍の成長(2015年の市場規模は165億円と推定)
● なかでも農業クラウドサービスが大きく進展
→ 2015年比約7.5倍の伸びとなり、農業IT化市場の48%を占める
本調査の範囲
本調査では、農業クラウドサービスを中心に、農業でITを活用する以下の6分野について市場規模予測を行った。
1.農業クラウドサービス
農作物の生産から流通、販売管理など営農に係る業務を支援するクラウドサービス。蓄積したデータを用い農作業業務をサポートするほか、これまで経験と勘に頼っていた生産ノウハウをデータ化し、素人でもベテランと同じように農作物を生産可能にするシステム。
2.GPS/オートパイロットシステム
地球周回のGPS 衛星が発信する信号をトラクタなど農機具に設置したアンテナで受信し、正確に現在位置を把握し、運転席のモニタにリアルタイムに表示することで、トラクタなど農機具の自動走行や施肥など農作業をガイド、サポートするシステム。スマート農業を進める上でのキーテクノロジーの1 つとされる。
3.農業用センサ・ネットワーク
温度・湿度・土壌水分などを測定するセンサやネットワークカメラなどをサーバーに接続して気温や湿度、日射量、土壌水分、CO2 濃度などのデータを同時に取得する。また、遠隔地から農場の気象や作物の生育状況などをモニタリングしWeb を介して消費者に公開することもできる。
4.施設園芸・環境制御
外気気温、ハウス内温度、湿度、日射、CO2、風向、風速、降雨、培地温等を測定し、それぞれ最適な状態にするため暖房機や保温カーテン、換気や遮光を複合的に自動制御する。現在、日本の施設園芸では複合環境制御装置が主に使用され、温度、湿度、日射等を重点的に制御している。
5.産直POSシステム(クラウド)
JA、産直施設、道の駅、ネット通販などで使われるPOSシステム。トレーサビリティ機能も含む。
6.植物工場(太陽光利用型/完全閉鎖型を対象)
植物工場は、野菜や苗を中心とした作物を施設内で光、温湿度、二酸化炭素濃度、培養液などの環境条件を人工的にコントロールし、季節・場所に関係なく安定生産するシステム。
完全閉鎖型は光、気温、湿度、液温(地温)、液肥(肥料)の完全制御が可能。一方、太陽利用型は、太陽光を取り入れるため、光、気温、湿度、液温(地温)の制御は一部可能となる。
農業IT化の市場規模予測
● 農業IT化の市場規模は、2020年に732億円強と予測
2015年比約4.5倍の成長(2015年の市場規模は165億円と推定)
2016年以降の農業IT化市場は、当面実証試験のものが多いが、2年後の2018年には施設園芸・植物工場、測位衛星の整備、精密農業が立ち上がり、本格運用の段階に入ると予想。
2015 年の農業IT 化の市場は、およそ165 億円。2020 年はクラウドサービスが本格化し、732 億円強の市場と予測した。
農業IT化市場の拡大要因
- TPPへの参加表明による農産物の自由化、6 次産業化推進による強い農業の推進、生産から加工・流通の農業情報創成・流通促進戦略等による基盤づくりなどが促進要因。
- 2017年後半に準天頂衛星システムが整備され、位置情報など精密農業のインフラ基盤が整備され。
- 農業分野ではITスキルの弱さが課題とされていたが、今では、スマートフォン・タブレット端末などは当たり前のITツールとなっている。
農業IT化のスピード
- 農業分野のIT 化の進展は息の長いものとなる。「アーリーマジョリティ層(市場の3 割強の層)」への普及には5~7 年の時間を要すだろうとのベンダの声もある。
- 現在、先進的導入者であるイノベーターは3~5%、これがアーリーアダプター層(13~15%)に達すれば、先進的導入者に追随するマジョリティ層(34%)に達し、農業IT 化市場の開花期となる。
農業IT化投資額水準
- 通常、ITの投資額は売上高の数%と言われている。海外企業では、ITへの投資額は売上げの3~5%となっている。製造業と非製造業の違いや、農業分野のIT環境の未整備等を考慮し、農業分野でのIT投資額としては、農業・食品関連産業市場規模の3%程度とみた。
● なかでも農業クラウドサービスが大きく進展
2015年比約7.5倍の伸びとなり、農業IT化市場の48%を占める。
2015 年時の農業クラウドの市場規模は45 億〜46 億円規模と見られている。今後、ベンダのサービスメニュー・Web アプリ等の拡充、コストパフォーマンスの改善などで、2016 年は倍に増え、急速に導入が進むと予想される2018 年に250 億〜270 億円規模を形成、2020 年には全市場の48%、350 億円規模まで拡大すると予測した。
農業クラウドサービスの拡大要因
- 以前も、農業分野でのIT 活用はあったが、小規模農家(法人)には導入コストや操作性の点で難しい面があった。現在は、通信インフラが整備され、入力しやすいスマホやタブレット端末も普及してきた。安価で繊細な情報をセンシングできるモニタリング機器、作業現場や農地でも手軽に扱えるようになった。
- 「利用した分だけ払う」というクラウドサービスは、コスト負担を抑えることができることから、今後は、個人農場にも広がっていくと思われる。
- 農業生産性の向上に向けたクラウドサービスの提供事業者が増え、サービスが浸透してきた。2012・13 年頃までは、大手ベンダ(富士通、NEC、日立ソリューションズ、アグリコンパス)がメインで、サービスも地図ベースでの圃場管理・生産履歴・営農支援など限定的な利用であったが、この1~2 年様々なベンダが農産物の生産・流通に重点を置いたサービスを浸透させてきている。サービスメニューが多様化し、選択肢が増えることは農業IT 化市場を活性化させ、市場規模の成長になる。
調査概要
- ■ 調査項目(個別企業の調査項目)
-
• 企業の農業IT化 への取り組み経緯
• 企業の農業IT 製品・サービス名称・システム概要・サービス価格等
• 実績・課題
• 今後市場性、実証・導入事例等 - ■ 調査対象企業
-
• 農業クラウド・環境制御機器装置などの提供・サービス企業
• 農機メーカ、GPS ガイダンス・オートパイロット等の提供企業
㈱アグリコンパス、㈱イーエスケイ、イーサポートリンク㈱、㈱IT 工房Z、ウォーターセル㈱
キーウェアソリューションズ㈱、小林クリエイト㈱、㈱クリエイティブハウスコーポレーション
㈱セールスフォース・ドットコム、ソリマチ㈱、㈱大和コンピュータ、NEC ソリューションイノベータ㈱
ネポン㈱、東日本電信電話㈱、㈱日立ソリューションズ、富士通㈱、富士通エフサス㈱
パナソニックES エンジニアリング㈱、㈱ルートレック・ネットワークス、PS ソリューションズ㈱
㈱JSOL、井関農機㈱、クボタ㈱、ヤンマー㈱、IHI スター㈱、クロダ農機㈱、ジオサーフ㈱
㈱トプコン、㈱ニコン・トリンブル - ■ 調査方法
- ヒアリング(面談)及び電話サーベイ、公開情報収集
- ■ 調査時期
- 2016 年2 月〜2016 年5 月
〒113-0034
東京都文京区湯島3-19-11 湯島ファーストビル 4F
TEL : 03-3835-9211(代) / FAX : 03-3831-0495
E-mail : info@seedplanning.co.jp
担当 : 林(はやし)