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調査結果
電子カルテ/PACS(*)の市場規動向
電子カルテ市場規模は、2022年に2,558億円
→ 2020年は前年比299億円減、以降は順調に成長
→ 2020年は新型コロナウィルスによる医療機関のIT投資鈍化
PACS(*)市場規模は、2022年に460億円
→ 2020年は新型コロナウィルスの影響で前年比22億円減と予測
→ クラウドへの移行が進む(2019年1,620施設→2022年2,220施設に拡大)と予測
(*) PACS:Picture Archiving and Communication Systems =医用画像ネットワークシステム
市場調査・コンサルティング会社の株式会社シード・プランニング(本社:東京都文京区 梅田佳夫社長、以下シード・プランニング)は、電子カルテ/PACSに関する市場調査を行い、このほどその結果をまとめましたのでお知らせいたします。
医療や介護、そしてそれらを包括する社会保障の領域では、団塊の世代が75歳以上の後期高齢者に達する2025年問題が議論されてきました。2020年を迎え、2025年が近い将来となった今、医療やその他の領域における連携の必要性が益々求められています。
「経済財政運営と改革の基本方針2020~危機の克服、そして新しい未来へ~」(骨太方針2020)では「データに基づく医療ニーズを踏まえ、都道府県が適切なガバナンスの下、医療機能の分化・連携を推進」、「病院と診療所の機能分化・連携等を推進」といった内容が記載されており、医療分野内や、更にその外との連携を促進するためにも、医療情報の電子化は不可欠です。
また、令和2年度診療報酬改定の基本方針においては「医療従事者の負担軽減、医師等の働き方改革の推進」の具体的方向性の例として「業務の効率化に資する ICT の利活用の推進」が謳われ、医療従事者の勤務環境の向上においても、ICTが資するところは大きいと考えられます。
更に、今般の新型コロナウィルスの影響もあり非対面式のシステムやサービスの構築が強く求められる状況となっています。医療機関における電子カルテ等の既存のICT機器は、医療分野における感染症対策の面でも基礎的インフラとしての役割を負っています。
http://store.seedplanning.co.jp/item/10864.html
調査結果のポイント、調査概要は以下の通りです。
調査結果のポイント
→ 2020年は前年比299億円減、以降は順調に成長
→ 2020年は新型コロナウィルスによる医療機関のIT投資鈍化
<病院向け電子カルテ市場動向>
市場規模予測
- 2020 年の病院向け電子カルテ市場規模は、2,247 億円(納入数535 件)と推定される。
- 2014 年4 月の消費税増税により、2013 年の駆け込み特需と2014 年に反動の買い控えがあった。
- 2019 年から2020 年も消費増税に関して同様の動きがあったことに加え、新型コロナウィルスの影響による病院IT 投資の低減が見込まれ、市場は前年比で273億円ほど縮小する。
- 以降はゆるやかに右肩上がりになると予測。2022年の市場は2,394億円(納入件数570件)と予測する。
普及状況
- 病院の普及率は43.9%で、規模別では「400 床以上」の大規模病院での普及率が最も高く、80.8%となっている。
- 電子カルテを導入している病院数は「100~199 床」が最も多く1,131 件で、かつその普及率は40.5%にとどまっている。リプレース含め、今後納入数の伸びが期待できる規模の病院である。
- 「21~99 床」の普及率は29.8%で、この分類において最も低い。
<診療所向け電子カルテ市場動向>
市場規模予測
- 2020 年の診療所向け電子カルテ市場規模は約145 億円、年間納入数4,800 件と推定される
- 2014 年4 月の消費税増税により、2013 年に駆け込み特需があり、2014 年には反動で納入数が前年比1~2 割減となった。2019 年10 月に消費税増税が実施され、2019 年にかけて特需があった。
- 2020 年は新型コロナウィルスの影響により市場の縮小が見込まれる。これに消費増税に伴う縮小も加味し、減少幅が大きくなっている。
普及状況
- 一般診療所の電子カルテ普及率は41.6%で、病院の病床数別普及率と比較すると「100~199 床」と同程度の割合となっている。
- 有床診療所の電子カルテ普及率は34.4%で、無床診療所よりも低くなっている。有床診療所は、総数、病床数ともに近年は減少しているが、専門性や地域医療に特化した形の特殊なニーズを担っていく可能性があり、それに応じた電子カルテ導入も期待できる形態である。
- 無床診療所の電子カルテ普及率は42.1%で、有床診療所よりも高い割合だが、導入していない無床診療所数は39,691 施設にのぼる。
→ 2020年は新型コロナウィルスの影響で前年比22億円減と予測
→ クラウドへの移行が進む(2019年1,620施設→2022年2,220施設に拡大)と予測
<病院向けPACS市場動向>
- 病院向けPACS 市場は、リプレース市場として定着している。2019 年の市場規模は、消費税の関係で件数・金額ともに微増(駆込み需要に支えらえた)で410 億円規模となった(1065 件の更新導入)。
- 2020 年上期は、まだコロナ禍の影響は大きく現れてきてはいないが、20 年下期、2021~22 年に掛けて更新の延伸などが出てくるものと予想され、市場の先行きは見通せない状況が続くと思われる。
- 病院向けPACS システム市場では、今後、システム価格の低廉化をどうカバーするかがポイントになる。一つは、クラウドによる医用画像データの外部保管サービスの導入から10 年余が経過し、サービスの認知は浸透しているが、大規模病院では依然として、オンプレミスでの運用が多い。
- IT 系のベンダーにより中・小規模病院ではクラウドは進展してきている。今後、地域中核病院や、系列化している病院やグループ病院でのクラウドサービスの導入がポイントになるだろう。BCP・事業継続性や新型コロナ等、突然の災害に対応できるシステム作りがポイントになるだろう。
<診療所向けPACS市場動向>
- 2019 年度の診療所・クリニック向けのPACS 市場は、クラウドサービスが本格化し、画像保管のみならず、色々なサービスの享受ができる、消費税の増税に相まって、納入件数、金額とも伸びた。金額は63 億円規模(導入件数は1400件)を形成したものと思われる。
- 診療所・クリニック向けPACS も、クラウドの導入が進んでおり、競争は厳しくなってきている。サービス内容や質(提供する医療情報等)が、導入のポイントになってきている。また、コロナ禍のなかで、読影依頼などのサービス拡がっており、本格導入期として期待できる。
- 今後のクリニック向けのPACS システム市場は、クラウド化の進展で様々なサービスが増え、100 床前後の小規模病院と共に市場は拡大基調にある。
<クラウドPACS市場動向>
- 2010 年2 月、厚生労働省の通知「「診療録等の保存を行う場所について」の一部改正について」により、民間企業が保有するデータセンタの医療情報の外部保存が認められ医療クラウドサービス提供の環境が整った。
- クラウドサービスは、電子カルテ、PACS といったアプリケーションだけでなく、地域医療連携システム、在宅療養支援サービス、遠隔画像診断サービス、治験向けサービス(EDC)、調剤薬局向けサービスなど様々なサービスで活用される可能性があり、提供されているサービスも数多く存在している。 医療機関におけるデータ量の急速な増大、およびネットワーク活用の広まりの中、クラウドサービスには「他施設との連携が容易」、「自前で保守理をする手間がない」、「価格が安い」、など様々なメリットがあり、PACS 導入においても、クラウド基盤は、確実に浸透、市場を拡大している。
- 2014 年時、クラウドPACS の導入施設は390 余りであったが、2019 年には4.2 倍の1600 施設を超えた。2020 年の上期の段階では1760 施設を超え、コロナ禍の中で中小規模病院への導入が進んでいる。
- クラウドPACS の導入施設のとしては、中小病院への導入が進んでおり、大規模病院や大学系の病院での導入は停滞している。今後、VNA などベンダーを選ばないプラットフォームの構築が進んでおり、膨大な情報の利活用に向けて、様々な研究会なども立ち上げられており導入促進が図られそうだ。個人情報の保護や、クラウド環境の安全性(DC の所在や何重冗長で対応しているか)が整備され、クラウドでのデータ管理、各種サービスの提供が進むと予想される。
調査概要
- 調査対象
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・ 電子カルテベンダー
・ PACSベンダー
・ 電子カルテ導入病院・診療所
・ PACS 導入病院・診療所 - 調査項目
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・ 市場動向
・ 市場規模
・ システムベンダーシェア
・ サーバ・端末シェア
・ ベンダー・ハード選定基準 等 - 調査方法
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・ 訪問面接調査
・ ヒアリング調査
・ Web 等公開情報収集等 - 調査期間
- 2020年5月〜2020年9月
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広報担当